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2023年8月25日
9月10日
12/01/2023
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「史上最高のワールドカップにしたい」渡邊雄太 ワールドカップと次世代への想い

ブルックリン(USA) - 11月、NBAのシーズン序盤、ニュースのヘッドラインには渡邊雄太の名前が溢れていた。ケビン・デュラント、カイリー・アービング、ベン・シモンズというスター選手を擁するチームで、この日本人フォワードが話題を独占していた。

"過去最高のワールドカップにしたいです。"

 

これはシーズン開幕から、スリーポイントシュートをかなりの高確率で決め続けた結果だった。

スリーポイントシュートが57.1パーセントと、NBA全体のトップに立つほど好調だった渡邊について、アービングは「彼は今、世界最高のシューターだ」と評している。

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 今、このスタッツを確認すると、渡邊は3ポイント成功率でトップに立っていないことがわかるが、これは、彼がランキングに入るのに十分な数の3ポイントを打っていないからである。それでも、27試合で1試合あたり2.7本の3ポイントを試み、52.7%を記録している。これは、1試合あたり2本以上の3ポイントを決めている選手の中で突出して高い成功率である。

我々は皆、こうなることを予見していたか、と言われるとそうではない。

渡邊はジョージ・ワシントン大学時代、ディフェンスのエースだった。
NBAでも今シーズン以前は、4シーズンで3ポイント成功率は193回の試投で35.2%。3ポイントシュートが苦手、というわけではなかったが、長距離シュートのスペシャリストというイメージもなかった。しかし、渡邊は賢いバスケットボール選手であり、アジャストすることを学び、成長を重ねてきた。

彼は、自分自身が高いレベルでプレーし続けるために、また、高いレベルの環境でプレーし続けるために、常に自分自身を向上する方法を探している。それは、日本でプレーしていたときも、そしてアメリカでプレーする機会を探し始めたときも、ジョージ・ワシントン大学時代、大学バスケットボール界で最高のディフェンシブ・プレーヤーのひとりに成長したときも、メンフィス・グリズリーズ、トロント・ラプターズ、ブルックリン・ネッツでチャンスを得るために、何度も自分を証明しなければならなかった時も、常にそうであった。

そして、環境を変えるたび、彼は次のレベルにステップアップしたように見えたが、彼はすでにその先のステップを見据えていた。それは渡邊が故コービー・ブライアントを尊敬しているという話を聞くと、納得できる。

「自分自身がより良いプレーをするために、まだやるべきことがたくさんありますし、まだまだ改善すべき点があります。」2021年、渡邊がまだラプターズに所属していた頃、The Athleticを通じてこう語っていた。「今までやってきたことが徐々に実を結んできていて、自分がNBAでやっていく実力があることを、証明し始めてきていると思います。」

3ポイントシュートはまだ渡邊の新しい武器だが、日本代表チームでの彼のプレーを振り返ると、これは彼が少しずつ取り組んできたことの結果であることがわかる。

2019年のワールドカップアジア予選に日本代表として出場した渡邊は、出場した2試合でわずか5本の3ポイントシュートを試みただけだった。中国で開催されたワールドカップ本選では、5試合で13本の3ポイントを試み、成功率は15.4%だった。

変化が見えたのはその後である。

2021年の東京オリンピックでは、3試合で15本の3ポイントを試み、成功率を33.3%に倍増させた。その後、2022年のアジアカップでは、渡邊は出場した4試合すべてで3ポイントを決めている。

渡邊が効果的な3ポイントシューターへと進化したことと、日本代表チームでプレーしたことは直接的には関係ないかもしれないが、代表での経験が役に立っていることは間違いないだろう。

FIBAの独占インタビューで渡邊は、「アジアカップの日本代表では、ネッツとは全く違う役割を担っていたが、夏の日本代表でプレーしたことは、速いプレーを学ぶのに役立った」と語っている。

日本代表は東京オリンピック以降、トム・ホーバス氏がヘッドコーチに就任して以来プレースタイルの調整を続けている。渡邊が指摘する「速いプレー」という点について見ると、ワールドカップ2019と東京オリンピックでは3ポイントシュートで最下位だった日本が、2022年のアジアカップでは最も多くの3ポイントシュートの試投数を記録するチームになっていた。

「基本的には今、(ネッツで)やっているのと同じことなんです。でも、日本代表でプレーしたことで自信がつきました。」

この代表での経験がネッツでのプレーに活かされていることについては、逆もいえる。

「今、ここ(ネッツ)で担う役割や、得ている素晴らしい経験は、この夏、日本代表チームに戻ったときにも役立つと思います。」

渡邊が言う「この夏」というのは、日本、フィリピン、インドネシアで開催されるFIBAバスケットボールワールドカップ2023のことを指している。

「すごく楽しみにしています」と渡邊は語った。「特に僕にとっては、昨年の夏、日本でオリンピックが開催されましたが、無観客での開催でした。だから、たくさんの日本のファンの前で、特に家族や友達の前でプレーできることは、僕にとってすごく大きな意味があることです。」

渡邊とAkatsuki Japanは、ワールドカップのグループラウンドをホームでプレーする機会を得て、一戦一戦、日本のファンの前で全力を尽くし、最高のパフォーマンスをするに違いない。

「最高のワールドカップにしたいです。前回の中国大会は全敗だったので、今回は自分たちがどれだけ成長したかを見せるいい機会になると思うし、その準備はできています」

この2.06Mのスモールフォワードは、ワールドカップ本選で、ピースが正しい場所にはまることを望んでいる。

そして渡邊は、ワールドカップの開幕に間に合うよう、最大限の努力を続けている。実際に、昨年の夏のアジアカップでプレーすることを決めたのも、システムやチームメイトをよく理解し、馴染みたいという理由があってのことだった。

「(日本代表でプレーすることは)僕にとって大きな意味があります。(昨年の)夏には、プレーする必要はないと言われました。でも、ヘッドコーチ、システム、すべてが変わっていたから、プレーしたかったんです。それで代表でプレーすることを伝えました。」

「アジアカップには多くの若手選手がメンバー入りしていて、多くの若手選手と知り合えたし、新しいコーチングスタッフと会えたのもよかったです。若手選手はいい選手ばかりで、(アジアカップで)プレーしてよかったと思います。」

その「若手選手」の中には、将来有望なポイントガードの河村勇輝や日本で世代トップクラスのシューターの富永啓生も含まれており、彼らは今年のワールドカップの最終登録メンバーになる可能性が十分にある。早くからシニアのナショナルチームでプレーする機会を得て、渡邊から学ぶことは、彼らの将来にとって貴重な機会である。

18歳のときにアジアカップ2013に出場し、シニア代表の座を勝ち取った渡邊はこう語る。

「若いうちから国際試合を経験することは、若手選手にとって重要なことです」

「私は今28歳ですが、18歳、19歳の時に代表チームに入りました。その経験を積むことは、彼らにとって本当に大切なことで、その経験を通じて、国際試合で勝つことがどれだけ大変なことなのか、体感できます。彼らは数年後にはとてもいい選手になっていると思うので、このまま成長を続けてほしいですね。」

世界のトップクラスで輝き続けるために、自身も日々努力を重ねている渡邊雄太だが、頭の片隅には、常に次の世代のことがある。日本のバスケットボール界の次世代のために、様々な道を切り開く責任の一端を担っていることを、彼は自覚しているのだ。

彼にとって、今の地位を確立するまでの道のりは簡単なものではなかった。

「自分は(NBAで)プレーするのに値しないと思った時期もありました。」とHoopsHypeに語っている。「家族、友人、チームメイト、コーチングスタッフは、常に前を向くよう、励ましてくれました。」

そして、ここまで来た今、これまで以上に彼は自分のためだけでなく、日本のバスケットボールの代表としてプレーすることに集中している。

渡邊選手はこう語る。「本当に誇らしいです。ここまで来たことはすごく意味があることだし、これを続けることがすごく大切だと思っています。僕や塁ががNBAでプレーしている姿を見て、自分たちもNBAプレーヤーになれるんだ、と思ってもらいたいんです。」

「僕が子どもの頃は、日本人だから無理だ、とみんな思っていました」

「日本の選手たちが、自分たちをどう思うか、その考え方を変えたいんです。だから日本を代表した存在としていることがすごく大事だと思っています。」

今年、日本で開催されるワールドカップで渡邊を見る若い日本のバスケットボーラーたちが、将来彼の足跡をたどってくれることを期待したい。

FIBA