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2024年2月19日
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04/03/2024
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馬場のブレイクアウト:ハイフライヤーはシューターとしてどれだけ成長したか?

東京(日本) - FIBAバスケットボールワールドカップ2023アジア予選Window 4に初出場して以来、馬場雄大は何かが違う。

そのイラン戦で馬場は、FIBAの大会におけるシニア代表のプレーでキャリアハイとなる27得点を挙げた。ワールドカップ2019のアメリカ戦以来、彼がUSG%で30%を超える得点率を記録したのはこの試合だけであり、フィールドゴールアテンプト数も13本と、1試合あたりのアテンプト数がFIBAの試合で2番目に多かった。

 

 

とはいえ、日本代表がスター選手の八村塁と渡邊雄太を欠いてプレーしていた中で、これは予想された変化だった。馬場がオフェンス面で高いパフォーマンスを発揮したことは確かに印象的だったが、ロスター構成を考えれば、それは予想外のことではなかった。

ワールドカップで渡邊と一緒にプレーするようになると、オフェンスでの優先順位として、馬場という選択肢はチームの中で少し下がった。しかし、その変化は彼のプレーに明らかに見られた。FIBAアジアカップ2025予選の初戦、中国との大一番に出場したとき、4本のスリーポイントを含む24得点、キャリアハイの27EFFを記録し、その成長は再び鮮明になった

 

ここ数年、馬場雄大の何が変わったかをより明確に知るには、彼がオフェンスでどのようにプレーしているのかをもう少し掘り下げる必要がある。

私たちは、馬場が爆発的な運動能力を持ち、堂々とフィニッシュできるスラッシャーであることを知っている。これは馬場が日本チームでしてきたことでもあり、トレードマークであるトランジションでの豪快なダンクを決めるとき、“BABA BOOM“を見るのを観客は楽しみにしている。

 

馬場のこの面は今でも健在で、私達を大いに楽しませてくれるが、馬場のオフェンスのメインフォーカスではない。最近の大会では、特にロングレンジからのジャンプシュートの存在感が向上している。

日本代表での馬場雄大のスリーポイントシュート

Competition
Games Played
Minutes/Game
3PA per game
3P%
3PA/FGA Ratio
EABA Championship 2017 4 19.6 0.8 33.3% 13.0%
FIBA Asia Cup 2017 4 15.3 0.5 50.0% 13.3%
FIBA Basketball World Cup 2019 Asian Qualifiers 10 22.5 0.4 0.0% 8.7%
FIBA Basketball World Cup 2019 5 25.5 2.6 30.8% 28.9%
Tokyo Olympics 3 28.1 2.0 33.3% 27.0%
FIBA Basketball World Cup 2023 Asian Qualifiers 2 28.8 4.5 55.6% 50.0% 
FIBA Basketball World Cup 2023 5 21.7 2.0 30.0% 37.0%
FIBA Asia Cup 2025 Qualifiers 1 37.1 6.0 66.6% 60.0%

 

数字だけでも、すでに興味をそそられる。ワールドカップ2023アジア予選の2試合で放ったスリーポイントの数(9本)は、馬場が過去18試合で放ったスリーポイントの数と同じである。(EABA選手権2017(3本)、FIBAアジアカップ2017(2本)、FIBAバスケットボールワールドカップ2019アジア予選の全Windowの合計(4本))

アジアカップ2025予選の初戦、中国戦で馬場は再びFIBAの試合でのキャリアハイとなる6本の3ポイントアテンプトを記録した。

また、馬場がこれまでスリーポイントを打つのを躊躇していたことを考えると、自信をもってスリーポイントシュートを打っているのも頼もしい。

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この成長において、新進気鋭の若手から日本のオフェンスの重要なピースへと成長した馬場にとって、プレー時間の増加は明らかに大きな要因である。それでも、数字を分解してみると、最近のワールドカップで少し落ち込んだとはいえ、馬場がシュートレンジを広げる努力を続けていることは明らかだ。

さらに興味深いのは、これらのスリーポイントシュートがどのように分布しているかということだ。馬場はより多くのスリーポイントを打っているが、トランジションの中でのシュートやドライブのような、より効率的なシュートを犠牲にしてスリーポイントを打つ回数が増えているわけではない。

スリーポイントシュートが、馬場雄大のシュートセレクションの大部分を占めていたミドルレンジのロングシュートに取って代わっているのだ。

日本代表での馬場雄大のミドルレンジジャンプシュート
Competition*
Games Played
MJA** per game
MJ%***
MJA/FGA Ratio
FIBA Asia Cup 2017 4 1.0 0.0% 26.7%
FIBA Basketball World Cup 2019 Asian Qualifiers 10 1.8 50.0% 32.1%
FIBA Basketball World Cup 2019 5 1.2 0.0% 13.3%
FIBA Basketball World Cup 2023 Asian Qualifiers 2 0.0 N/A 0.0% 
FIBA Basketball World Cup 2023 5 0.0 N/A 0.0%
FIBA Asia Cup 2025 Qualifiers 1 0.0 N/A 0.0%

* EABA Championship 2017と東京オリンピックの情報が不十分
** = ミドルレンジジャンプシュート試行回数
*** = ミドルレンジジャンプシュートのシュート率

1.95メートルのウイングは、ジャンプシュートに苦しんでおり、特にアジアカップ2017ではそれが顕著に見られた。そこから馬場は、ジャンプシュートの改善に力を入れてきたようで、その成果はワールドカップ2019アジア予選で見ることができた。

しかし、ワールドカップであれオリンピックであれ、レベルの高いタレントや運動量の多い選手と対戦する中で、馬場はシュートを急いで打つ、また対戦相手にも打たされるような場面が多く見られた。

 

ワールドカップ2023アジア予選の最初の2試合では、スリーポイントシュートの試行回数は増えていたが、ミドルレンジのシュートは1本も打っていない。

トム・ホーバスが日本代表ヘッドコーチに就任すると、馬場のスリーポイントシュートを打つ数が増えるのは必然だった。ホーバスはチームのスター選手にプレーの調整を要求し、馬場はその挑戦を受けて立った。

"彼がシューターのマインドにチェンジできるかどうかの挑戦"と、ホーバスはバスケットカウントのインタビューで話した。

"求められる新しいバスケができて、自分を客観視しながらプレーできたような、成長を感じられた試合だった"と馬場はバスケットカウントで話した。

"3ポイントシュートをファーストオプションとして考えると、正直、バスケットボールがこんなに簡単なんだなって思えるほど、ディフェンスが反応した。その後のドライブのスペースが自然と増えてきて、パスも展開できてコートが広く使えるようになった。このメンタリティを極めたいと思っている。"と馬場は付け加えた。

 

馬場のオフェンスオプションの中で、スリーポイントシュートの優先順位が高まったということは、ペリメーターでボールを受けたとき、すでにシュートレンジに入っているということでもある。これまでは、馬場が自分のプレーゾーンに入るためにパスを受けてから1、2回ドリブルをする場面を何度も目にした。

スリーポイントがオプションに加わったことで、ディフェンスにクローズアウトしなければいけないというプレッシャーをかけることができ、ウイングスコアラーとしての選択肢が増えた。

これは、馬場がここ数年で成長させてきたもので、クラブでのプレーでも明らかにその変化が見られる。

2022年にInStatが提供した情報とデータによれば、馬場のポゼッションの大半はトランジションで、NBLでは28.4パーセント、NBA Gリーグでは39.7パーセントと予想通りだ。一方でキャッチアンドシュートのポゼッションはNBLでは25.9パーセント、Gリーグでは15.4パーセントであった。

馬場のプレーのメインはオープンフロアのシチュエーションであり、NBLではトランジションで1ポゼッションあたり1.25点、Gリーグではトランジションで1ポゼッションあたり1.29点。しかし、キャッチアンドシュートの場面でも成功を収めており、NBLではキャッチアンドシュートの場面で1ポゼッションあたり1.01点、Gリーグではキャッチアンドシュートの場面で1ポゼッションあたり1.5点を記録している。

プロクラブでのプレーの統計を積み重ねると、より顕著にその変化が見られる。

馬場雄大のプロクラブでの3ポイントシュート数
Team
League
Season
Games Played
3PA/G
3PM/G
3P%
3PA/FGA Ratio
Alvark Tokyo B.League (JPN) 2017-18 45 1.84 0.62 33.7% 29.3%
Alvark Tokyo Asia Champions Cup 2018 5 1.4 0.4 28.6% 17.9%
Alvark Tokyo  B.League (JPN) 2018-19 65 1.26 0.29 23.2% 15.0%
Texas Legends G-League (USA) 2019-20 41 2.29 0.95 41.5% 49.0%
Melbourne United NBL (AUS) 2020-21 36 2.53 0.83 33.0% 41.7%
Texas Legends G-League (USA) 2021-22 8 2.12 0.88 41.2% 26.5%
Melbourne United NBL (AUS) 2021-22 10 2.50 0.40 16.0% 55.5%
Texas Legends G-League (USA) 2022-23 39 3.08 1.26 40.8% 37.7%
Nagasaki Velca*** B.League (JPN) 2023-24 34 3.85 1.32 34.4% 41.2%

*** =2024年3月1日現在

全体として、馬場のゲームにおけるこうした変化は興味深い。

この長距離シュートの成長をより“エキサイティング“ なものにしているのは、馬場がイラン(5/6本)や中国(4/6本)といった相手に対して、3ポイントシュートを決めていることだ。日本のバスケットボールファンは、馬場がオフェンスに自信を持ち、アグレッシブになっていることに満足しているのは間違いない。馬場のこの一面を伸ばすために、日本のプロリーグでプレーすることを勧めていたホーバスの存在も、この成長を助けた一因であっただろう。

結果は満足のいくものだった。

"彼が望んでいたことに対してハッピーだったが、彼のキャリアのこの時点では、彼がB.LEAGUEの顔になる必要があると本当に思っている" と、中国を破った試合後の記者会見でホーバスは語った。

"これは彼の成長の大きな部分になる。僕が誇りに思うのは、一緒にプレーし始めたころ、最初に、彼にもっとスコアラーとして、シュートファーストのメンタリティになるように頼んだ。そして(今日の試合では)彼は4/6本のスリーを打っている。それは私が思い描いていたことだ。彼のゲームのバランスの中で、3ポイントシュートを打たせる必要があるんだ。"

"中国は彼に3ポイントシュートを打たせなければならなかったし、そうすることで彼のドライブレーンが広がり、フリースローを獲得することにもつながった。いったん彼が自信を持ってプレーできるようになれば、彼はますます自信を持ってプレーできるようになり、さらに開花すると思う。本当に楽しみだ。"

イラン戦と中国戦での3ポイントシュートが、単なる異常値でないことは明らかだ。だからこそ、日本のバスケットボールファンは、最も輝かしいスターの一人が、自分のプレーの幅を広げる努力を続けていることを、何よりも喜ぶべきなのだ。

FIBA