馬場のブレイクアウト:ハイフライヤーはシューターとしてどれだけ成長したか?
東京(日本) - FIBAバスケットボールワールドカップ2023アジア予選Window 4に初出場して以来、馬場雄大は何かが違う。
そのイラン戦で馬場は、FIBAの大会におけるシニア代表のプレーでキャリアハイとなる27得点を挙げた。ワールドカップ2019のアメリカ戦以来、彼がUSG%で30%を超える得点率を記録したのはこの試合だけであり、フィールドゴールアテンプト数も13本と、1試合あたりのアテンプト数がFIBAの試合で2番目に多かった。
とはいえ、日本代表がスター選手の八村塁と渡邊雄太を欠いてプレーしていた中で、これは予想された変化だった。馬場がオフェンス面で高いパフォーマンスを発揮したことは確かに印象的だったが、ロスター構成を考えれば、それは予想外のことではなかった。
ワールドカップで渡邊と一緒にプレーするようになると、オフェンスでの優先順位として、馬場という選択肢はチームの中で少し下がった。しかし、その変化は彼のプレーに明らかに見られた。FIBAアジアカップ2025予選の初戦、中国との大一番に出場したとき、4本のスリーポイントを含む24得点、キャリアハイの27EFFを記録し、その成長は再び鮮明になった。
ここ数年、馬場雄大の何が変わったかをより明確に知るには、彼がオフェンスでどのようにプレーしているのかをもう少し掘り下げる必要がある。
私たちは、馬場が爆発的な運動能力を持ち、堂々とフィニッシュできるスラッシャーであることを知っている。これは馬場が日本チームでしてきたことでもあり、トレードマークであるトランジションでの豪快なダンクを決めるとき、“BABA BOOM“を見るのを観客は楽しみにしている。
馬場のこの面は今でも健在で、私達を大いに楽しませてくれるが、馬場のオフェンスのメインフォーカスではない。最近の大会では、特にロングレンジからのジャンプシュートの存在感が向上している。
日本代表での馬場雄大のスリーポイントシュート
Competition |
Games Played |
Minutes/Game |
3PA per game |
3P% |
3PA/FGA Ratio |
EABA Championship 2017 | 4 | 19.6 | 0.8 | 33.3% | 13.0% |
FIBA Asia Cup 2017 | 4 | 15.3 | 0.5 | 50.0% | 13.3% |
FIBA Basketball World Cup 2019 Asian Qualifiers | 10 | 22.5 | 0.4 | 0.0% | 8.7% |
FIBA Basketball World Cup 2019 | 5 | 25.5 | 2.6 | 30.8% | 28.9% |
Tokyo Olympics | 3 | 28.1 | 2.0 | 33.3% | 27.0% |
FIBA Basketball World Cup 2023 Asian Qualifiers | 2 | 28.8 | 4.5 | 55.6% | 50.0% |
FIBA Basketball World Cup 2023 | 5 | 21.7 | 2.0 | 30.0% | 37.0% |
FIBA Asia Cup 2025 Qualifiers | 1 | 37.1 | 6.0 | 66.6% | 60.0% |
数字だけでも、すでに興味をそそられる。ワールドカップ2023アジア予選の2試合で放ったスリーポイントの数(9本)は、馬場が過去18試合で放ったスリーポイントの数と同じである。(EABA選手権2017(3本)、FIBAアジアカップ2017(2本)、FIBAバスケットボールワールドカップ2019アジア予選の全Windowの合計(4本))
アジアカップ2025予選の初戦、中国戦で馬場は再びFIBAの試合でのキャリアハイとなる6本の3ポイントアテンプトを記録した。
また、馬場がこれまでスリーポイントを打つのを躊躇していたことを考えると、自信をもってスリーポイントシュートを打っているのも頼もしい。
この成長において、新進気鋭の若手から日本のオフェンスの重要なピースへと成長した馬場にとって、プレー時間の増加は明らかに大きな要因である。それでも、数字を分解してみると、最近のワールドカップで少し落ち込んだとはいえ、馬場がシュートレンジを広げる努力を続けていることは明らかだ。
さらに興味深いのは、これらのスリーポイントシュートがどのように分布しているかということだ。馬場はより多くのスリーポイントを打っているが、トランジションの中でのシュートやドライブのような、より効率的なシュートを犠牲にしてスリーポイントを打つ回数が増えているわけではない。
スリーポイントシュートが、馬場雄大のシュートセレクションの大部分を占めていたミドルレンジのロングシュートに取って代わっているのだ。
日本代表での馬場雄大のミドルレンジジャンプシュート
Competition* |
Games Played |
MJA** per game |
MJ%*** |
MJA/FGA Ratio |
FIBA Asia Cup 2017 | 4 | 1.0 | 0.0% | 26.7% |
FIBA Basketball World Cup 2019 Asian Qualifiers | 10 | 1.8 | 50.0% | 32.1% |
FIBA Basketball World Cup 2019 | 5 | 1.2 | 0.0% | 13.3% |
FIBA Basketball World Cup 2023 Asian Qualifiers | 2 | 0.0 | N/A | 0.0% |
FIBA Basketball World Cup 2023 | 5 | 0.0 | N/A | 0.0% |
FIBA Asia Cup 2025 Qualifiers | 1 | 0.0 | N/A | 0.0% |
* EABA Championship 2017と東京オリンピックの情報が不十分
** = ミドルレンジジャンプシュート試行回数
*** = ミドルレンジジャンプシュートのシュート率
1.95メートルのウイングは、ジャンプシュートに苦しんでおり、特にアジアカップ2017ではそれが顕著に見られた。そこから馬場は、ジャンプシュートの改善に力を入れてきたようで、その成果はワールドカップ2019アジア予選で見ることができた。
しかし、ワールドカップであれオリンピックであれ、レベルの高いタレントや運動量の多い選手と対戦する中で、馬場はシュートを急いで打つ、また対戦相手にも打たされるような場面が多く見られた。
ワールドカップ2023アジア予選の最初の2試合では、スリーポイントシュートの試行回数は増えていたが、ミドルレンジのシュートは1本も打っていない。
トム・ホーバスが日本代表ヘッドコーチに就任すると、馬場のスリーポイントシュートを打つ数が増えるのは必然だった。ホーバスはチームのスター選手にプレーの調整を要求し、馬場はその挑戦を受けて立った。
"彼がシューターのマインドにチェンジできるかどうかの挑戦"と、ホーバスはバスケットカウントのインタビューで話した。
"求められる新しいバスケができて、自分を客観視しながらプレーできたような、成長を感じられた試合だった"と馬場はバスケットカウントで話した。
"3ポイントシュートをファーストオプションとして考えると、正直、バスケットボールがこんなに簡単なんだなって思えるほど、ディフェンスが反応した。その後のドライブのスペースが自然と増えてきて、パスも展開できてコートが広く使えるようになった。このメンタリティを極めたいと思っている。"と馬場は付け加えた。
馬場のオフェンスオプションの中で、スリーポイントシュートの優先順位が高まったということは、ペリメーターでボールを受けたとき、すでにシュートレンジに入っているということでもある。これまでは、馬場が自分のプレーゾーンに入るためにパスを受けてから1、2回ドリブルをする場面を何度も目にした。
スリーポイントがオプションに加わったことで、ディフェンスにクローズアウトしなければいけないというプレッシャーをかけることができ、ウイングスコアラーとしての選択肢が増えた。
これは、馬場がここ数年で成長させてきたもので、クラブでのプレーでも明らかにその変化が見られる。
2022年にInStatが提供した情報とデータによれば、馬場のポゼッションの大半はトランジションで、NBLでは28.4パーセント、NBA Gリーグでは39.7パーセントと予想通りだ。一方でキャッチアンドシュートのポゼッションはNBLでは25.9パーセント、Gリーグでは15.4パーセントであった。
馬場のプレーのメインはオープンフロアのシチュエーションであり、NBLではトランジションで1ポゼッションあたり1.25点、Gリーグではトランジションで1ポゼッションあたり1.29点。しかし、キャッチアンドシュートの場面でも成功を収めており、NBLではキャッチアンドシュートの場面で1ポゼッションあたり1.01点、Gリーグではキャッチアンドシュートの場面で1ポゼッションあたり1.5点を記録している。
プロクラブでのプレーの統計を積み重ねると、より顕著にその変化が見られる。
馬場雄大のプロクラブでの3ポイントシュート数
Team |
League |
Season |
Games Played |
3PA/G |
3PM/G |
3P% |
3PA/FGA Ratio |
Alvark Tokyo | B.League (JPN) | 2017-18 | 45 | 1.84 | 0.62 | 33.7% | 29.3% |
Alvark Tokyo | Asia Champions Cup | 2018 | 5 | 1.4 | 0.4 | 28.6% | 17.9% |
Alvark Tokyo | B.League (JPN) | 2018-19 | 65 | 1.26 | 0.29 | 23.2% | 15.0% |
Texas Legends | G-League (USA) | 2019-20 | 41 | 2.29 | 0.95 | 41.5% | 49.0% |
Melbourne United | NBL (AUS) | 2020-21 | 36 | 2.53 | 0.83 | 33.0% | 41.7% |
Texas Legends | G-League (USA) | 2021-22 | 8 | 2.12 | 0.88 | 41.2% | 26.5% |
Melbourne United | NBL (AUS) | 2021-22 | 10 | 2.50 | 0.40 | 16.0% | 55.5% |
Texas Legends | G-League (USA) | 2022-23 | 39 | 3.08 | 1.26 | 40.8% | 37.7% |
Nagasaki Velca*** | B.League (JPN) | 2023-24 | 34 | 3.85 | 1.32 | 34.4% | 41.2% |
*** =2024年3月1日現在
全体として、馬場のゲームにおけるこうした変化は興味深い。
この長距離シュートの成長をより“エキサイティング“ なものにしているのは、馬場がイラン(5/6本)や中国(4/6本)といった相手に対して、3ポイントシュートを決めていることだ。日本のバスケットボールファンは、馬場がオフェンスに自信を持ち、アグレッシブになっていることに満足しているのは間違いない。馬場のこの一面を伸ばすために、日本のプロリーグでプレーすることを勧めていたホーバスの存在も、この成長を助けた一因であっただろう。
結果は満足のいくものだった。
"彼が望んでいたことに対してハッピーだったが、彼のキャリアのこの時点では、彼がB.LEAGUEの顔になる必要があると本当に思っている" と、中国を破った試合後の記者会見でホーバスは語った。
"これは彼の成長の大きな部分になる。僕が誇りに思うのは、一緒にプレーし始めたころ、最初に、彼にもっとスコアラーとして、シュートファーストのメンタリティになるように頼んだ。そして(今日の試合では)彼は4/6本のスリーを打っている。それは私が思い描いていたことだ。彼のゲームのバランスの中で、3ポイントシュートを打たせる必要があるんだ。"
"中国は彼に3ポイントシュートを打たせなければならなかったし、そうすることで彼のドライブレーンが広がり、フリースローを獲得することにもつながった。いったん彼が自信を持ってプレーできるようになれば、彼はますます自信を持ってプレーできるようになり、さらに開花すると思う。本当に楽しみだ。"
イラン戦と中国戦での3ポイントシュートが、単なる異常値でないことは明らかだ。だからこそ、日本のバスケットボールファンは、最も輝かしいスターの一人が、自分のプレーの幅を広げる努力を続けていることを、何よりも喜ぶべきなのだ。
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